曠野にひとり(李喬短篇集) 台湾郷土文学選集

2,484円(内税)

李喬は決 して写実主義的な郷土文学作家ではない。カフカやフォークナーなどの欧米文学の影響を受けながら、李喬作品は個人の家族と歴史の物語が、台湾の家族と歴史 の物語に普遍化されていく物語構造をもっている。・・・李喬はたえず新しい創作方法を探究しながら、それをつねに体系化していこうとする作家であ る。・・・李喬作品の面白さは、その方法をさらに新たに越えでていこうとする厚みを備えているところからくる。 「曠 野にひとり」では意識の流れを駆使しながら語り手の内面を吐露していくが、そこでは孤独や不安、不条理の中で絶望的感情を抱えながらも懸命に前進する人間 の姿を描き出し、実存主義的作風も大変顕著であった。・・・主人公が胎児へと変身してしまう「人間のボール」では、経済成長が続く一九六〇年代の台湾で社 会構造の変化に伴い誕生した都市労働者が抱える病的な深層心理を描き出しているが、男性サラリーマンがベッドの上で丸い胎児へと変身してしまう様子は、ま さにカフカ「変身」や安部公房「デンドロカカリヤ」などの変身譚を彷彿させる。 収録作品には、台湾のそれぞれの時代のかかえる問題の提示と時代への批評意識を充満させながら、つねに方法的実験を試みようとする李喬作品世界の多様性がよくあらわれている。(本書「解説」より) 虚構と真実―日本語訳短篇集序文 李喬 曠野にひとり 蕃仔(ファンネーリム)の物語 人間のボール ジャック・ホー 昨日のヒル 皇民梅本一夫 父さんの新しい布団 慈悲の剣―李白を化度す 「死産児」と私 家へ帰る方法 三木直大・明田川聡士訳(第3回配本) 研文出版 A5判 232頁

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